2008年10月5日日曜日

<2日目の4>本村地区へ PM12:00

 
ダイヤの都合で、地中美術館から町営の100円バスに乗って本村地区へ移動。
本村地区は、直島の東の端にある地区で、伝統的な「焼き板」で壁を貼った古い家が多く残っている。ここでは、その町並みを生かして、さまざまなアーティストが体験型のアートを設置している。(「家プロジェクト」と名づけられている。)

このようなアートが複数町の中にあることで、町自体にも観光産業が生まれている。タバコ屋さんがちょっとした案内所を兼ねていたり、古い家を改装した飲食店があったり。

島の全員の人がやっているわけではないと思うが、このような島の変化に肯定的な人たちは、この写真(タバコ屋さんを横から見たところ)のようにちょっとおしゃれな暖簾をめいめいの家に飾ったり、おしゃれな屋号プレートを家の前に出して島の歴史をなんとなく感じさせてくれたりする。

家プロジェクトについてはこの後の記事で書くけれど、こういった「町全体の雰囲気作り」そのものも立派なアートであり、直島という場所の独特な魅力を作り出しているような気がする。

2008年9月24日水曜日

<2日目の3>地中美術館へ 10:30AM

オーバル棟に行った後はしばらく館内をうろうろして、だいたい一通り見たところで、チェックアウトして島内のもう一つのアートスポット「地中美術館」に行くことにした。フロントに相談して、大きな荷物はホテルに預けておいた。
ここは撮影禁止の場所ゆえに外観のみ。だが、ここは本当にスゴイ。展示作品どころか、美術館の存在そのものが一種のアートだ。
まず、ここに写っている外観だが、これは実際の建物ではなくてチケットブースである。ここで入場券を買うと、秘密の研究所みたいな道を通って奥に行くように指示される。スタッフは皆研究所か宗教系にありそうな白装束で、人によってはマフラーとかマスクをしていたりするのだが、その無機的な統一感は、我々に訳もなく「怖い/怪しい/非人間的」という印象を与える。不安な時に見る悪夢みたいな光景でもある。この感覚自体が、まさにこの演出の狙っているところなんだと思う。
そういえば、ここのホームページも同じコンセプトで作られているようだ。http://www.chichu.jp/j/
安藤忠雄によって作られた建物は、コンクリートの打ちっぱなしで、ときどき敢えて傾いたような空間が作られていたり、階段を上り下りしなくても気がついたら地中深くに潜っていたり、面白い。建物自体が作品だ、と美術館自体が述べているのがよくわかる。
中に展示されている作品は、モネの「睡蓮」が4つ、ジェームズ・タレルの体験型の作品が3つ、そしてウォルター・デ・マリアの非常に大規模な作品が1つ。
「睡蓮」は真っ白な空間に天然の光を取り入れて展示されており、従来型の美術館ではあまり見られないような光の中でこの作品を見ることができ、作家の抱いた「印象」にできるだけ近づけるような試みがされている。
タレルの作品は、私はここで初めて体験したのだけれど、本当に面白い。すごく好きになってしまって、国内外にある彼の作品を追いにまた別の旅をしたいと思うぐらいだ。とくに「オープン・フィールド」はよかった。彼はさまざまな角度から光の可能性を追求しているアーチスト。彼の作品の中では、光、そして視覚というものについて考えさせられる。
そしてデ・マリアの作品は、まずその規模に圧倒される。自らが作品の中の一部となって歩き回ることができるので、さまざまに角度を変えて見ること、その見える風景、天から降り注ぐ光、それら全てがアートなのだろう。
共通して言えることは、ここは「光」について考える場だということだ。普段当たり前のように降り注ぎ、私たちに視界を与えてくれる光。その光という存在について、地中にある美術館の中で考えるというパラドクス。ある意味、地中でなければ成立しづらいコンセプトなのかもしれない。光の中では、光の存在には気づきにくいから。

<2日目の2>朝のオーバル棟 9:15AM

朝食のあと、もう一度例のケーブルカーで上層にのぼり、もういちどオーバル棟へ行った。実はオーバル棟は建物の上にのぼる階段がついているので、朝の光で眺めるとまた違ったものが見えるのではないかと思ったからだ。案の定眺望は素晴らしく、実は<2日目の1>で掲載した朝の海の写真はここで撮ったものだったりする。
で、ここではオーバル棟の朝の様子を掲載。<1日目の19>の写真と比べるとずいぶん雰囲気が違うのがわかる。


2008年3月27日木曜日

<2日目の1>ミュージアムレストラン 8:30AM

8:00起床。ここのところ朝早い日が続いていたので、わりとよく寝た気分。この日は風の音で目が覚めた。夜半は雨の音が聞こえていたのだが、知らないうちに止んだようだ。

簡単に支度をして朝食へ。ちなみに、ベネッセハウスのアメニティはTHANN(タン)というタイのメーカーのもので、おしゃれでオーガニックな感じであった。唸ったのは、使いかけの石鹸を持ち帰るためのチャックつきの袋が置いてあったこと。逆に安い石鹸でこれをつけても貧乏くさいだけだが、それなり物を使っていると「いいものなので持って帰ってくださいね」というニュアンスになってなんだか格好いい。

朝食は自分たちの泊まっているミュージアム棟の1Fにあるミュージアムレストランで洋風朝食のコースをいただいた。

壁にアンディ・ウォーホルのマリリンなどが飾られているこの場所は、朝食も事前に要予約。朝だけ予約を取っていったのは、単にビュッフェを避けたかっただけなのだが(パーク棟のテラスレストランの朝食は、事前予約不要のビュッフェ)これは大正解だったと確信する。朝からバスに乗って、行って帰って、では面倒である。こっちのレストランなら、フロアを下りてすぐ朝食がいただけるし、その行きかえりに再びギャラリーを見て回ったりする余裕が出来る。

朝食は、いわゆるイングリッシュブレックファスト。フレッシュジュースの種類、お肉をソーセージとベーコンとハムの中から、また卵の調理の仕方を選べる。そしてパン。サービスの人が「トーストと、テーブルロールと・・・あと、フレンチトーストもできます」とおっしゃる。そりゃフレンチトーストでしょう!!
この、スペシャルなフレンチトーストがそれはもう美味しかったのです。ほどよいやさしい甘さとやわらかさ。口に入れるとゆるゆる溶けます。

窓の外もいい天気。うーむ今日もいい一日になりそうだぞ。

2008年3月16日日曜日

<1日目の19>夜のオーバル棟 9:00PM


上層階のオーバル棟は、こんな感じ。(ちなみに写っている人物は母)池の周囲にあるドアは宿泊室のもの。ここにも6室の宿泊室があるが、先ほどのケーブルカーのことを考えるに、けっこう上級者(のんびりしたい人)向きだと思った。

このオーバル棟も、下のミュージアム棟も、そして食事をしたパーク棟やその近くにあるビーチ棟も、ベネッセハウスの全ての宿泊棟は安藤忠雄の設計で、それぞれに趣向が凝らされている。中でもこのオーバル棟は、非日常の空間の演出という意味で一番気合が入っているなぁと思うのである。

オーバル棟に泊まっていない人でも、ここにあるバーは使うことができる。せっかく来たので一杯飲んでいくことにした。バーの中にも当然アートが置かれているが、スタイリッシュというよりもアットホームな雰囲気。だが・・・あんまり長居したい感じの雰囲気じゃないのだ。何でだろうと思っていたら、家具には一家言ある母が言った。「せっかく素敵な場所なんだから、椅子やテーブルをもっとゴージャスにすればいいのに」

そういわれてみると、ここにあるテーブルや椅子は、パイン系の色のごくシンプルなものだった。すわり心地も、そう良いわけではない。せっかくここまで凝った場所にあるバーなのだから、もっとどっしりして離れがたいようなソファーを置いたり、あるいは思いっきりスタイリッシュにしてみてもいいと思うのだが。
バーにしては、「カフェ的」すぎるのかも。

母はフルーツ系のカクテル、私はサイドカーを頼んで一休みした後、ケーブルカーに乗って部屋へ戻ると、お部屋のテーブルの上に謎のギフトボックスが。何!?

「お夜食にお召し上がり下さい」・・・中には、おいなりさんが2つ。
おお~。これは夕食が早い人たちだったらとってもうれしいプレゼント。
だけど私たちはおなかいっぱいだったので、これは明日のお弁当にしよう、ということにした。

シャワーを浴びてベッドに横になる。
今日はよく歩いたし、お酒も入ったのであっという間に寝てしまった。

<1日目の18>ケーブルカーに乗る 8:30PM

のんびり美術館内を探索したあとは、別館のオーバル棟に行ってみることにした。ミュージアム棟の後方、山の上にある「オーバル」へは相当距離があるのだが、そこへどうやって行くかというと・・・

コレで行くのである。↓


しかもコレ、運転手なしの自動運転。
見た目のレトロ感もあいまってなかなか覚悟がいるが、もちろんここまで立派な施設であるからには安全対策も考えられているだろうと信じてチャレンジ。

ミュージアム棟の2Fにあるケーブルカー乗り場へのドアを開けると、あるのはケーブルカーを待つための椅子と、オーバル棟に行ってしまったケーブルカーを呼び戻すためのボタンのみ。
ボタンに近づくとモニターのスイッチが入って、オーバル棟側の駅の様子を確認できるようになっている。向こう側で乗り降りが完了していることを確認のうえボタンを押せば車両はこっちにやってくるので、5分間ほど待てば乗れる、という仕組みだ。(駅は外にあるのだが、寒くないように暖房など工夫されているらしかった)

モニターを覗く。ちょうど人が降りるところだったので、先客が完全に降りたことを確認してボタンを押す。・・・ケーブルカーは動かない。なんでやねん。あれこれ試行錯誤していると、上層の駅のほうにスタッフが出てきて、ケーブルカーのドアを閉めなおした。・・・なるほど、ドアが完全に閉まってないと動かない仕組みなのね。それにしても先客、ちゃんとドア閉めろよな!!

気を取り直して、やってきた車両に乗る。中は6人掛けで、斜面に合わせて斜めに2人ずつ三列座れるようになっている。こちらは母と二人なので、一番下の段に腰かけ、ドアを閉めてロックをかけ、発車ボタンを押す。ケーブルカーは静かに発車し、ゆっくり山を登っていった。

それにしてもこの感じ、何かを思い出す・・・そうだ、昔パリのモンマルトルの丘のケーブルカーで、発車直後に車両故障が発生して閉じ込められたときに似ているなぁ・・・と思っていたら、母も同じことを思っていたらしく、「大丈夫かねぇ~」と言葉を交わす。

山を登る5分間、車内を見渡すと、緊急用の設備らしきものは連絡用の携帯電話のみ。きっと何かあったときはこれで電話して助けに来てもらうってことなんだろう。一方ケーブルカーの上る斜面のほうはどんどん傾斜を増してきた。傾斜がきつくなると、ケーブルカーは自動的に座席の角度を変え乗客が快適になるように調整している。見た目によらず意外とハイテク?なのか??

そのうち陸が切れて海が見え、ここは朝来たらとても良い眺めだろうな、と思っているうちに上層階に到着。次に下で呼び出す人のために、しっかりドアを閉めてから(笑)、オーバル棟に入ってみる。

2008年3月13日木曜日

<1日目の17>ミュージアム内、夕食後の散策 8:30PM

食事のあと、シャトルバスに乗ってミュージアム棟へ戻った。

ベネッセハウス内のギャラリーは一般人でも8:00~21:00の間見ることができるが、宿泊していれば早朝や夜中も含めていつでも見られる。実際のところ遅い時間や朝早くは宿泊客しかいないので、自分のペースで好きな作品をのんびり見て回ることができるのだ。(ちなみにほかの棟内にも、いくつかの作品やデザインチェアなどが点在している)

ギャラリーの作品は、屋外展示と違って撮影もご遠慮下さい、ということになっているので写真は撮らなかったが、なかなか面白いものが多数ある。

なかでも私のお勧めを挙げるなら、

夜見るべき作品:ブルース・ナウマン「100生きて死ね」
朝見るべき作品:安田侃 「天秘」

以上2つ である。

ナウマンの「100生きて死ね」(100 Live and Die)は、ネオンサインを使った大型の作品で、館内のホールのど真ん中に設置されている。天井に明かり取りの窓があるので、ホールは昼は明るく、夜は暗い。で、この作品はネオンを使っているだけに夜のほうが圧倒的に存在感があるのだ。

50の異なる単語とLIVE、そしてDIEという単語を組み合わせた、カラフルな100のフレーズがひたすら明滅するこの作品は、そのテーマも夜にふさわしい。作品の目の前に椅子(これまたデザイナーもの)が設置されているので、夜、暗くなったホールで椅子に座って1~2分ぐらいはじっくり眺めていると、この作品はちらっと見て終わらせるのではなくて、この作品が放つ全てのメッセージを読み取るまで時間をかけて眺めることを要求している作品であることがわかってくる。

深く考えても興味深い作品だし、深く考えなくても足を止めて見ずにはいられない面白さがある。
こういう作品は大好きだ。

一方、安田侃(やすだ・かん)は、その名前は知らなくてもその作品はみんなどこかで見たことがある、というぐらいメジャーなアーティストである。東京国際フォーラムで、あるいは東京ミッドタウンで、とてもすべすべとした、手触りのいい大理石のかたまりが置かれているのを見たことがないだろうか。あれが安田侃の作品である。

このギャラリーでは、「天秘」は壁に囲われた屋外に設置されている。夜に行くと外は真っ暗だし寒いので、誰もその近くまで行こうと思わないどころか、私たちはその手前のガラス戸が誰でも開けられるようになっていることすら気づかなかった。

が、朝明るい光の中でそこへ行って初めて、作品の近くに「靴を脱いでおあがり下さい」(※不確か)という表示があることに気づいたので、あがってみた。というか寝てみた。冷たく硬いのに、なぜかやわらかい気がしてしまう石を寝床にして眺める、直島の朝の空は格別だ。・・・夜行けば星空が見えるのだろうけれど、少なくともこのシーズンでは、石の上ではたぶん寒くてのんびり眺めるところじゃなかろう。というわけで、朝がお勧めなのである。



<写真>「天秘」に寝転がって青空を見ながら世界の神秘について考える(?)masaccio

<1日目の16>ベネッセハウス・テラスレストラン 7:00PM

約1時間の散歩は楽しかったが、すっかり体が冷えてしまった。ほぼ全てを見終わったころ、夕食の時間になったので、今夜の夕食会場であるテラスレストランへ向かった。

ここの夕食は、コース料理のみである。私たちは体を温めたくて、スープのある6300円のコースを選んだ。

前菜、スープ(野菜のポタージュ)、魚料理(魚の蒸し焼き)、肉料理(ポトフ)、そしてデザート。

・・・前菜からデザートにいたるまで、美術館のディナーだけあって、いろんな意味でなかなかアーティスティックなお料理である。こだわりとしては、「地場の素材を使うこと」「美的であること」の2つに努力しているように思えた。ときどき奇をてらいすぎてビミョーな味わいになっている皿がないでもないが、まず見た目が凝っていて面白いし、野菜が多めでヘルシーな感じが良い。

コストパフォーマンスという観点からは、同じお値段でよりおいしいお料理が出せるお店はたくさんあるだろうが、場の雰囲気を楽しむという観点ではここの料理はよく考えられている。そして、最終的にはデザートがメチャクチャおいしいので全てが許せてしまう。ここのデザートはホントに凄かった。なんなんだろう(笑)

<写真上>魚料理。蒸したひらめ(確か)の抹茶ソースがけ。
<写真下>デザート。ショコラフォンダンとみかんのピール、ココナツアイス添え

2008年3月11日火曜日

<1日目の15>ベネッセハウス屋外 6:00PM

ベネッセハウスでは、予約の時点では夕食の予約は必須ではない。本館であるミュージアム棟での食事は要予約だけれど、パーク棟にあるテラスレストランは当日予約で大丈夫なのだ。

私たちは夜7時に夕食の予約を入れ、それまでの間、移動がてら屋外アートを見て歩くことにした。本来、ミュージアム棟とパーク棟の間は若干距離が離れているのでバスで移動するようになっているのだが、その間のルートに屋外美術作品が点在しているので、散歩がてら見て回ることもできるようになっているのだ。

フロントで野外作品の位置と作品名を書いた地図をもらい、オリエンテーリング気分で一つ一つ見て回る。

残念ながら、いくつかの作品は補修中で近寄れなかったが、屋外にあるものはダイナミックで派手な作品が多く、なかなか面白い。好きなように近づいて、いろんな確度で見てみたり、ものによっては触ってみることもできるのが醍醐味であろう。(作品保護のため、触らないで・・・とパンフには書いてあるのだけれど、そもそも潮風にさらされている作品なのだからあまり気にしても仕方ないように思われる・・・もちろん、乱暴に扱うのはご法度だとは思うのだが。)

写真上:「シップヤード・ワークス 船尾と穴」(大竹伸朗)
浜辺に廃船のかけらがたたずんでいる。かつて船だったものが海を臨んで陸の上にあるさまは、すこし詩的で寂しい。


写真下:「南瓜」(草間彌生)
浜辺の廃船とはまったく違う、力強い存在感。草間さんの作品は、何を見てもそこに「草間さん」が存在していて、彼女にしか創れない、炸裂するようなパワーが宿っているのが凄いと思う。


<1日目の14>バルコニーからの眺め

泊まった部屋には大きなバルコニーがあり、そこからの眺めはこのような感じ。
ちょうど窓が西に向いており、海に落ちる夕日の美しさを堪能できる。
湾の美しさもあいまって、なかなか幻想的な風景である。

2008年3月10日月曜日

<1日目の13>ベネッセハウス305号室 5:30PM

そんなわけでまずは港からシャトルバスでベネッセハウスに直行し、チェックイン。

ベネッセハウスには、「ミュージアム棟」(美術館の建物そのもの)、「パーク棟」(少し離れた屋外展示に面した建物)、「ビーチ棟」(浜が目の前)、「オーバル棟」(ミュージアム棟の別館。詳細は後述)の4つの建物があり、それぞれに宿泊室がある。

私たちは、ミュージアム棟の一番お手ごろ価格の部屋である305号室に宿泊した。一番お手ごろ、とはいっても決して居心地は悪くなく、ご覧のとおり部屋は広々していて清潔感があるし、窓の外の眺めが素晴らしい。リゾート気分満載である。

各部屋にはその部屋に入らないと見られないアート作品が展示してある。それから特筆すべきは、部屋にテレビが常設されていないこと。たぶん意図的なものだと思う。(フロントに頼めば貸してくれるらしいが。)

おかげで、部屋の中も外もすごく静かで、夜は雨音を聞きながら眠り、朝は風が窓をたたく音で目覚めることとなった・・・まさに「自然の中でくつろいでいる」感覚である。日常生活ではなかなか自然の音に気を留めることがないので、新鮮な体験だった。

あと、細かい話で恐縮だが、セルフサービスのお茶・紅茶があるのはわりと普通だけど、ドリップタイプのコーヒーもついてるのはちょっとステキだと思った。

お風呂はユニットバスだけれどそれなりにゆったりつくられているし、過不足ない。なかなか気持ちよい滞在のできる宿である。

<1日目の12>直島:宮浦港 5:00PM

ついに直島に到着。日はすでにだいぶ傾いていた。
フェリーを降りると早速、近代的な「海の駅なおしま」と鮮やかな草間彌生の「赤かぼちゃ」がお出迎え。(この写真には写ってないけどもう少し左にある)

その後ろには、懐かしい感じの漁師町が静かに控えている。

そんなコントラストの強い風景が自然に共存している不思議。

ただ、あんまり風景を味わっているヒマはなかった。

フェリーの時間に合わせて、今夜の宿「ベネッセハウス」の島内循環バスが待っていたからである。
母に急かされて慌ててバスに乗る。(実際は、出発時間がわりと余裕を持って設定されているようで、そんなに急がなくてもよかったのだが)

直島町のホームページによると、この島は早くから瀬戸内の交通の要衝だったようで、その島の名は保元の乱(1156年、平安末期の朝廷の権力争い)に敗れた崇徳上皇がこの島に立ち寄ったとき、島民の素直な気性を賞して名づけたものという。江戸時代には幕府の直轄地だったというし、船で瀬戸内を行くときに寄港地として使いやすかったのだろう。

港町として発展してきたこの島の転機は2つあり、一つは1917年の三菱マテリアルの製錬所設置。これによって島は漁業と海運業に加えて、工業による発展の機会を得た。そしてもう一つが1989年以降のベネッセによる一風変わったリゾート開発事業の開始だ。

教育事業の一環としての国際キャンプ場の設置から始まったベネッセの事業は、1992年に「泊まれる美術館」であるベネッセハウスのオープンへと続き、それからいくつかの企画展を経て、そのうち屋外展示、さらには町の廃屋を利用した作品展示へと広がり、次第に島全体をアートにする試みへとつながっていった。

今では世界中の優れたコンテンポラリー・アート作品がそろう、アート界では日本でももっとも注目度の高いエリアとなっている。

このような方向で発展しているリゾートは日本ではほかに例を聞いたことがないし、おそらく世界でも珍しいと思われる。逆にここが有名になりすぎたのでなかなか二番煎じは難しいのではなかろうか。直島は、それぐらい「尖った」場所なのである。

2008年3月6日木曜日

<1日目の11>宇野港 4:00PMぐらい

茶屋町駅で宇野線に乗り換え、田んぼの風景を走り抜け、終点の宇野駅に到着。

宇野駅は「ターミナル」らしく線路が尽きた向こうに駅舎があって、その改札をくぐるとすぐに港が見える構造になっていた。

宇野港は、瀬戸大橋ができる前は中国地方と四国を結ぶ最大の拠点の一つで、交通の要衝だったのだそうだ。その歴史を物語るように、港はとても立派で、フェリーの船着場がいくつも並んでいる。

ただそのわりに人がいなくて閑散としている感じが、どことなく寂しい。

先ほども書いたように今は列車や自家用車で香川の高松まで行けてしまうので、宇野港と高松を結ぶフェリーの意義は昔と比べて薄れてしまっているに違いない。ただ、私たちのように、橋の通っていない瀬戸内の島々の一つに行きたい人々にしてみれば、船は相変わらず重要な交通手段だ。

私たちの向かう「直島」に向かうフェリーは、現在この宇野港と高松港からのみ出ていて、もっとも本数が多いのはこの宇野港からの路線である。距離も短くて20分ぐらいで着いてしまう。

港のフェリー待合所で30分ほど過ごした後(ここはあまりにも何もなくてとても手持ち無沙汰だったが)、フェリーに乗り込んでいよいよ直島へ向かう。

<1日目の10>岡山駅:快速マリンライナー 3:13PM

後楽園を出たころには2:30を回っていた。

一応、岡山駅前に帰るリミットを3:00に設定していたのでバスを探したが、うろうろしている間に行ってしまったのでタクシーに乗った。後楽園の正門前にはタクシー乗り場があって、常時何台も待っているので、あまり探し回る必要はなかった。

駅に着いて、まずコインロッカーに預けておいたキャリーケースを取り出し、少しだけ駅の名店街をうろうろ。妙にじゃこ天の美味しそうな店があったので、軽食用にゲットした。

それから、快速マリンライナー41号に乗る。
この快速列車はそのまま乗っていると瀬戸大橋を越えて高松まで行くらしい。それなりに席が埋まっており、日常生活に使われている路線であることが感じられる。

四国との行き来は、このように、列車もバスも自家用車も当たり前のように海を渡ってしまう感覚が面白い。北海道も同じように本州の隣にある島だけれど、海を渡ることはもっと大ごとだという感覚がある気がする。やはり早い時代から文化が花開いた土地との違いなんだろうか。

列車が出発するころ、小腹がすいたので、買ったじゃこ天を連れ(母)と分かち合って食べた。「枝豆」と「海鮮」を半分ずついただいたのだが、どっちもしみじみ美味しい。

この店、「じゃこ天や」(http://uma-foods.com/)もある意味名店かも。

2008年3月5日水曜日

<1日目の余談>岡山みやげもの

岡山といえば桃太郎。桃太郎といえばきびだんごである。

というわけで岡山ではきびだんごを買った。岡山城の売店にはマスカット味だの桃味だの色々売られていたけど、やっぱり元祖だろうということで廣榮堂(http://www.koeido.co.jp/)の「元祖きびだんご」を購入。

残念ながら旅の途中で全部食べてしまったので写真がないが(苦笑)、白くて小さくてやわらかいお団子は、素材を生かしたやさしい味で、旅のおやつにぴったりだった。

ちなみに、買わなかったけど買えばよかったなぁ・・・と思ったのは、後楽園内に売っている餡入りのきびだんご。お茶屋の茶菓子としていただいたのだけど、きなこと餡と団子の味のバランスがよく、これまた美味しかった。お勧め。

mixiのブログで以前、北海道のきびだんご(棒状で黒っぽい)は全国的に売られていると思っていた、という話を書いたが、これでやっと本家本元の「吉備団子」を認識できたよ・・・。
※きびだんごの食べつくしにチャレンジしている方がいるので、品物の比較についてはここが便利。

岡山では、会社の同僚へのお土産に桃太郎(?)キティも購入。たしかになんとなく桃っぽい色ながら、微妙なパチものっぽさが漂う謎の一品。


そうそう一つ忘れていた。岡山の人は桃太郎に愛着があるばかりでなく、桃を県のシンボルとしても捉えている模様。たとえば河川の表示もこんな感じ。なんだかかわいい。

<1日目の9>後楽園でいっぷく 2:00PM

後楽園の池の真ん中に、趣深い茶屋が一軒浮かんでいるのだが、ここの門には藁でできた輪がちょこんと乗っていて、ひと手間かけないと門から中へは入れないようになっている。
門の脇には、「お抹茶(800円)ご利用の方のみお入り下さい」と張り紙。
そういえば、朝「空弁」を羽田で食べて以来、まだ昼食を摂ってない。別におなかはまだ空いていないけど、お茶ならちょうどいいかも。
で、茶屋を訪れてみた。
800円で、後楽園限定「あん入りきびだんご」2つとお抹茶。最初、ちょっと高いんじゃ?と思ったのだが、お茶をいただきながらお茶屋のお姉さんとお話していたら、この島茶屋の中は最近まで一般の人は入れなかったのが、今年からこのようにお茶屋を始めて、予約がなくても誰でも入れるようになったらしい。つまり入場料込みなんだな。納得。
しかも、茶器は備前焼、座っているところは昔は殿様の休み処だった場所だそうだ。つまりここで過ごす時間は世が世なら庶民には絶対体験できないものだったわけで、そう思うとありがたみが増してくる。しばし一服。

■写真解説
・右上:島茶屋と太鼓橋
・右中:あん入りきびだんご
・右下:島茶屋からの眺め



















<1日目の8>後楽園にて

さて、岡山といえば、金沢の兼六園、水戸の偕楽園と並ぶ日本三名園の一つ、後楽園がある。

他の二箇所も行ったことがない私だが、いつかは全部回ってみたいと思っていたので、この機会に寄ってみた。

正直、冬の庭園というのはどんなものか・・・と思っていたが、そこは日本庭園、四季おりおりの美しさがきちんと考えられているものである。芝は枯れていても、既に花をつけている梅の色や水のきらめき、温む風に、まもなく本格的な春が訪れる予感がなんとなく感じられた。

あと感心したのは、この庭を造った池田の殿様の美意識の高さである。日本庭園の要素としては池や木々、草花の配置はもちろん石や建造物のセンスも大切だけれど、さすがに後楽園は「絵になる」場所に事欠かない。殿が名を残すためには、優秀な為政者であると同時に教養人でなくてはならないわけで、なかなか大変な商売である。

それにしても日本の美とは独特なものである。世界のどんな国にも似ていない、それでいてやはり美しいと感じさせる、不思議な美意識がそこにある。西洋との対比でいえば、なんとなく日本の美のほうが土のにおいがするというか、自然の中に溶け込んだ美であると思う。(しかし決して手がかかっていないわけではなく、十分に繊細な細工をした上でなおかつ自然に見せるという美学がそこにある)

そのあたりは、なんとなく食べ物とか、服とか、音楽とかにも現れているような気がしないでもない。

■写真解説

上:「花菖蒲池・八橋」。伊勢物語にちなんだデザインらしい。

中:「流店(りゅうてん)」。板張りの小上がりの中央にさわやかに水が流れていてなかなか小粋。お殿様の休憩所であり、接待などにも使われたそう。

下:「沢の池」から岡山城方向を望む。(お城、あんまり見えませんが。)

<1日目の7>林原美術館

岡山城のすぐ近くに、「林原美術館」という美術館がある。ご覧のとおり武家のように立派な門が目印。(ただし、この写真は中庭から撮影しているけど)

なんでも、もとの岡山城主の池田家の財宝を受け継いで展示しているんだそうで・・・お宝がありそうな予感がして寄り道してみたら、開催していたのは

「華やかな日本刀 ― 備前一文字」・・・。

一館まるごと刀剣の館と化していた。渋い。渋すぎる。
私は日本刀は嫌いではないが詳しくもない。一方で、館内には個々の刀剣に魅入るシニアなおじ様たちがいっぱい。あまりにも自分たちが場違いな気がして、さっさと出てきてしまった。これはこれでめったに見られない貴重な展示だったに違いないのだが。

あとで改めて受付にいた職員の方に聞いたら、ここには常設展というのはなくて、特別展をやるときには、収蔵品の中からテーマを選んで一斉入れ替えをするような形になるんだそうだ。一方、普段は収蔵品の中から適宜選んで時々入れ替えながら展示しているそう。ということは、この美術館、行くたびに違うものが展示している可能性が高いということである。

ううーむ。では次回岡山に来ることがあったら、また寄ってみるか・・・。

2008年3月4日火曜日

<1日目の6>岡山城のおひなさま

岡山城では、もうすぐひな祭りということで、おひなさまを展示中。左が現代、右が江戸時代のもの。

撮影してよいのかどうかわからなかったのだが、せっかくなので、フラッシュをたかないように気をつけて撮影させていただいた。正直、城の中の展示はありがちな感じで、宇喜多家・小早川家・池田家に興味がないとなかなか面白いとは思えない内容だったけれど、このお雛様はなかなか時代が感じられてよかった。

2008年3月3日月曜日

<1日目の5>岡山城下 12:00PM

そんなわけで「烏城」(うじょう)こと岡山城を訪れてみた。名前のとおり黒い壁が印象的な城である。

ちなみに、この城の写真を撮るなら、この角度か、後楽園方向からの撮影がお勧め。焼失して再建した城の場合仕方ない部分もあるのだけれど、入り口側は「いかにも再建しました」という仕上がりなので、あまり格好よくない。

<1日目の4>岡電:こだわりの「くろ」

岡山から直島へ行くには「快速マリンライナー」に乗って茶屋町という駅まで行き、それから宇野線というローカル線に乗り換えるのだけれど、せっかく岡山まで来たのだからと城下まで足を伸ばしてみることにした。日本三大名園の一つ、「後楽園」を見たかったのだ。

持参したガイドブックによれば、城下まで行くには「岡山電気軌道」、略して「岡電」なるものに乗って”城下”(しろした)駅で降りるのが一番近いという。そこでJRの駅前からふと正面を見ると、なんともレトロな路面電車が出発を待っているではないか!慌ててダッシュして飛び乗る。

この電車、見た目もレトロだが内装もかなり凝っていて、昔ながらの路面電車の雰囲気がしっかり残してある。旅情あふれる、趣きのある素敵な電車だ。あとで調べてみたら、この車両は車体に書いてあるとおり「くろ」という名前で、その色は「烏城」の名で呼ばれる岡山城にちなんでいるという。岡電の人は、本当にこの路面電車を愛しているんだなぁと思った。(詳しくは岡電ホームページの「くろ」の解説をどうぞ)

<1日目の3>岡山駅 11:45AM


岡山空港はこぢんまりとした地方空港。(といっても、国際線も飛んでいるらしくコンチネンタル航空の飛行機なども停まっていた)

空港を出ると岡山駅行きのバスは目の前に停まっている。が、その前にチケット売り場があって、そこが意外と混んでいるのである。

なんでだろうと思ったら、どうも券売機の操作性の悪さのためらしい。
この券売機、普通に1枚チケットを買う分には簡単なのだが、Edyで買おうとかいっぺんに2枚買おうとか考えるととたんに難しい。どう難しいかというのは説明すると長くなるので割愛するが、ともかくそのために、せっかく空港シャトルバスには珍しい2階建てバスがいたのに目の前で逃してしまった。うーむ残念。結局そのあとの、普通のバスに乗って岡山駅へ向かった。

岡山へは、たしか高校生のとき(つまり15年前)修学旅行で来ている。そのときはいわゆる国鉄っぽい普通の駅だったと思われ、こんなに立派じゃなかった。

新しい岡山駅はピカピカで便利でかっこよかった。でも、駅前の桃太郎像は15年前と変わらなかった。(注:Wikipediaによると岡山駅は2006年に改築されたそうだ。)

<1日目の2>機上にて

ここのところ寝不足だったから飛行機が飛んだらすぐ寝てしまったのだけど、なんとなくまぶしくて目を覚ますと、そこにはアルプスの素晴らしい眺めが!
思わずカメラを取り出してパチリ。

これぞ、飛行機ならではの醍醐味。

<1日目の1>羽田空港 9:30AM


朝はラッシュを避けて、8:00発のバスで吉祥寺から羽田空港に行った。行き先は岡山空港。直島は香川県だが、地図で見ると明らかに岡山のほうが近い。実際、岡山の宇野港と香川の高松港からフェリーが出ているが、明らかに宇野港のほうが所要時間が短いし、本数も多いのである。

今回、旅気分が盛り上がっているときに、深く考えず飛行機で行くことにしてしまった。後日、新幹線で行ってもよかったんじゃ?という考えが頭をよぎって、後で調べてみたら「家を出発してからの時間」で計測すると、ほとんど違いがなかった。料金は飛行機のほうが高い。・・・となると、新幹線のほうが若干お得、ということにならないでもないのだが・・・ 飛行機のメリットを挙げるなら、前述の「ラッシュ回避」と、「旅気分」に尽きるんだろうな。(あと、乗り物に乗ってる時間がやや短いので腰が疲れない、というのもあるかも)たとえ国内であれ、飛行機って非日常な感じがしてわくわくする。鉄道ファンがテツだとすれば、空路マニアはなんていうんだろ。

我々の乗る飛行機は9:55岡山空港行き。向こうに着くのは11:15で、それからバスで岡山空港に移動するとおおよそ12時少し前に駅につく計算である。

<序>動機・・・というほどのこともないけれど

数日間、日常のことを忘れたいなぁ、と思った。
具体的な理由は挙げればきりがないけど、どちらかというと慢性的にそう思っているといえないこともないので、まぁ病気のようなものだと思う。

年末年始の休みはきちんと取れたけれど、それ以降あまり気の休まらない日々だったので、2月の下旬になって少し仕事が落ち着いてきた頃に、カレンダーをよく眺めてみた。

・・・2月29日からの4日間なら、金曜日も月曜日も特に予定は入っていないし、休めるんじゃない・・・?

と、私の中の旅の虫がささやきだして、その時期までもう10日もないというのに、慌ててどこに行こうか考え出した。

4日間という日程は、海外に行くには遠すぎる。けれど、国内にだって行ってないところはいっぱいある。ただ、まだ春は名のみのこの時期に行くとすれば、どちらかというと暖かい場所がいいなぁ・・・

で、挙がったのが四国。しかも、せっかくの自由旅行なので一定のテーマのある旅をしたいなぁ、と思って、以前から興味を持っていた、香川県の直島をメインにすることにした。

直島は、ご存知の方はご存知と思うが、ベネッセ(元・福武書店)が相当力を入れて「アートの島」として開発した、島そのものが美術館のようになっている、瀬戸内海の小島である。

そこまで行くならついでに、もう一つ気になっていた、徳島県・鳴門の「大塚国際美術館」も訪れてみることにした。ここは、おそらく世界最大の「模造美術館」である。大塚製薬がグループ企業のもつ陶板プリントの技術を活用して制作した、「1/1スケールのシスティナ礼拝堂」があることで知られている。

この2箇所を軸にして、飛行機のスケジュールなどと組み合わせると、おおよそこんなルートになった。

東京→岡山→直島→高松→鳴門→神戸→東京

なんとまぁ2泊3日、かつレンタカー無しにしては移動の激しい旅程になってしまった。
時刻表の上での計算だと大丈夫なはずなんだけど、果たして計算どおりにいくかなぁ、、、

若干心配を残してのスタートであるが、ま、ともかく国内だし最悪1日余計に休んでるから大丈夫でしょ、という軽いノリで、旅は始まったのである。