2008年10月5日日曜日

<2日目の4>本村地区へ PM12:00

 
ダイヤの都合で、地中美術館から町営の100円バスに乗って本村地区へ移動。
本村地区は、直島の東の端にある地区で、伝統的な「焼き板」で壁を貼った古い家が多く残っている。ここでは、その町並みを生かして、さまざまなアーティストが体験型のアートを設置している。(「家プロジェクト」と名づけられている。)

このようなアートが複数町の中にあることで、町自体にも観光産業が生まれている。タバコ屋さんがちょっとした案内所を兼ねていたり、古い家を改装した飲食店があったり。

島の全員の人がやっているわけではないと思うが、このような島の変化に肯定的な人たちは、この写真(タバコ屋さんを横から見たところ)のようにちょっとおしゃれな暖簾をめいめいの家に飾ったり、おしゃれな屋号プレートを家の前に出して島の歴史をなんとなく感じさせてくれたりする。

家プロジェクトについてはこの後の記事で書くけれど、こういった「町全体の雰囲気作り」そのものも立派なアートであり、直島という場所の独特な魅力を作り出しているような気がする。

2008年9月24日水曜日

<2日目の3>地中美術館へ 10:30AM

オーバル棟に行った後はしばらく館内をうろうろして、だいたい一通り見たところで、チェックアウトして島内のもう一つのアートスポット「地中美術館」に行くことにした。フロントに相談して、大きな荷物はホテルに預けておいた。
ここは撮影禁止の場所ゆえに外観のみ。だが、ここは本当にスゴイ。展示作品どころか、美術館の存在そのものが一種のアートだ。
まず、ここに写っている外観だが、これは実際の建物ではなくてチケットブースである。ここで入場券を買うと、秘密の研究所みたいな道を通って奥に行くように指示される。スタッフは皆研究所か宗教系にありそうな白装束で、人によってはマフラーとかマスクをしていたりするのだが、その無機的な統一感は、我々に訳もなく「怖い/怪しい/非人間的」という印象を与える。不安な時に見る悪夢みたいな光景でもある。この感覚自体が、まさにこの演出の狙っているところなんだと思う。
そういえば、ここのホームページも同じコンセプトで作られているようだ。http://www.chichu.jp/j/
安藤忠雄によって作られた建物は、コンクリートの打ちっぱなしで、ときどき敢えて傾いたような空間が作られていたり、階段を上り下りしなくても気がついたら地中深くに潜っていたり、面白い。建物自体が作品だ、と美術館自体が述べているのがよくわかる。
中に展示されている作品は、モネの「睡蓮」が4つ、ジェームズ・タレルの体験型の作品が3つ、そしてウォルター・デ・マリアの非常に大規模な作品が1つ。
「睡蓮」は真っ白な空間に天然の光を取り入れて展示されており、従来型の美術館ではあまり見られないような光の中でこの作品を見ることができ、作家の抱いた「印象」にできるだけ近づけるような試みがされている。
タレルの作品は、私はここで初めて体験したのだけれど、本当に面白い。すごく好きになってしまって、国内外にある彼の作品を追いにまた別の旅をしたいと思うぐらいだ。とくに「オープン・フィールド」はよかった。彼はさまざまな角度から光の可能性を追求しているアーチスト。彼の作品の中では、光、そして視覚というものについて考えさせられる。
そしてデ・マリアの作品は、まずその規模に圧倒される。自らが作品の中の一部となって歩き回ることができるので、さまざまに角度を変えて見ること、その見える風景、天から降り注ぐ光、それら全てがアートなのだろう。
共通して言えることは、ここは「光」について考える場だということだ。普段当たり前のように降り注ぎ、私たちに視界を与えてくれる光。その光という存在について、地中にある美術館の中で考えるというパラドクス。ある意味、地中でなければ成立しづらいコンセプトなのかもしれない。光の中では、光の存在には気づきにくいから。

<2日目の2>朝のオーバル棟 9:15AM

朝食のあと、もう一度例のケーブルカーで上層にのぼり、もういちどオーバル棟へ行った。実はオーバル棟は建物の上にのぼる階段がついているので、朝の光で眺めるとまた違ったものが見えるのではないかと思ったからだ。案の定眺望は素晴らしく、実は<2日目の1>で掲載した朝の海の写真はここで撮ったものだったりする。
で、ここではオーバル棟の朝の様子を掲載。<1日目の19>の写真と比べるとずいぶん雰囲気が違うのがわかる。


2008年3月27日木曜日

<2日目の1>ミュージアムレストラン 8:30AM

8:00起床。ここのところ朝早い日が続いていたので、わりとよく寝た気分。この日は風の音で目が覚めた。夜半は雨の音が聞こえていたのだが、知らないうちに止んだようだ。

簡単に支度をして朝食へ。ちなみに、ベネッセハウスのアメニティはTHANN(タン)というタイのメーカーのもので、おしゃれでオーガニックな感じであった。唸ったのは、使いかけの石鹸を持ち帰るためのチャックつきの袋が置いてあったこと。逆に安い石鹸でこれをつけても貧乏くさいだけだが、それなり物を使っていると「いいものなので持って帰ってくださいね」というニュアンスになってなんだか格好いい。

朝食は自分たちの泊まっているミュージアム棟の1Fにあるミュージアムレストランで洋風朝食のコースをいただいた。

壁にアンディ・ウォーホルのマリリンなどが飾られているこの場所は、朝食も事前に要予約。朝だけ予約を取っていったのは、単にビュッフェを避けたかっただけなのだが(パーク棟のテラスレストランの朝食は、事前予約不要のビュッフェ)これは大正解だったと確信する。朝からバスに乗って、行って帰って、では面倒である。こっちのレストランなら、フロアを下りてすぐ朝食がいただけるし、その行きかえりに再びギャラリーを見て回ったりする余裕が出来る。

朝食は、いわゆるイングリッシュブレックファスト。フレッシュジュースの種類、お肉をソーセージとベーコンとハムの中から、また卵の調理の仕方を選べる。そしてパン。サービスの人が「トーストと、テーブルロールと・・・あと、フレンチトーストもできます」とおっしゃる。そりゃフレンチトーストでしょう!!
この、スペシャルなフレンチトーストがそれはもう美味しかったのです。ほどよいやさしい甘さとやわらかさ。口に入れるとゆるゆる溶けます。

窓の外もいい天気。うーむ今日もいい一日になりそうだぞ。

2008年3月16日日曜日

<1日目の19>夜のオーバル棟 9:00PM


上層階のオーバル棟は、こんな感じ。(ちなみに写っている人物は母)池の周囲にあるドアは宿泊室のもの。ここにも6室の宿泊室があるが、先ほどのケーブルカーのことを考えるに、けっこう上級者(のんびりしたい人)向きだと思った。

このオーバル棟も、下のミュージアム棟も、そして食事をしたパーク棟やその近くにあるビーチ棟も、ベネッセハウスの全ての宿泊棟は安藤忠雄の設計で、それぞれに趣向が凝らされている。中でもこのオーバル棟は、非日常の空間の演出という意味で一番気合が入っているなぁと思うのである。

オーバル棟に泊まっていない人でも、ここにあるバーは使うことができる。せっかく来たので一杯飲んでいくことにした。バーの中にも当然アートが置かれているが、スタイリッシュというよりもアットホームな雰囲気。だが・・・あんまり長居したい感じの雰囲気じゃないのだ。何でだろうと思っていたら、家具には一家言ある母が言った。「せっかく素敵な場所なんだから、椅子やテーブルをもっとゴージャスにすればいいのに」

そういわれてみると、ここにあるテーブルや椅子は、パイン系の色のごくシンプルなものだった。すわり心地も、そう良いわけではない。せっかくここまで凝った場所にあるバーなのだから、もっとどっしりして離れがたいようなソファーを置いたり、あるいは思いっきりスタイリッシュにしてみてもいいと思うのだが。
バーにしては、「カフェ的」すぎるのかも。

母はフルーツ系のカクテル、私はサイドカーを頼んで一休みした後、ケーブルカーに乗って部屋へ戻ると、お部屋のテーブルの上に謎のギフトボックスが。何!?

「お夜食にお召し上がり下さい」・・・中には、おいなりさんが2つ。
おお~。これは夕食が早い人たちだったらとってもうれしいプレゼント。
だけど私たちはおなかいっぱいだったので、これは明日のお弁当にしよう、ということにした。

シャワーを浴びてベッドに横になる。
今日はよく歩いたし、お酒も入ったのであっという間に寝てしまった。

<1日目の18>ケーブルカーに乗る 8:30PM

のんびり美術館内を探索したあとは、別館のオーバル棟に行ってみることにした。ミュージアム棟の後方、山の上にある「オーバル」へは相当距離があるのだが、そこへどうやって行くかというと・・・

コレで行くのである。↓


しかもコレ、運転手なしの自動運転。
見た目のレトロ感もあいまってなかなか覚悟がいるが、もちろんここまで立派な施設であるからには安全対策も考えられているだろうと信じてチャレンジ。

ミュージアム棟の2Fにあるケーブルカー乗り場へのドアを開けると、あるのはケーブルカーを待つための椅子と、オーバル棟に行ってしまったケーブルカーを呼び戻すためのボタンのみ。
ボタンに近づくとモニターのスイッチが入って、オーバル棟側の駅の様子を確認できるようになっている。向こう側で乗り降りが完了していることを確認のうえボタンを押せば車両はこっちにやってくるので、5分間ほど待てば乗れる、という仕組みだ。(駅は外にあるのだが、寒くないように暖房など工夫されているらしかった)

モニターを覗く。ちょうど人が降りるところだったので、先客が完全に降りたことを確認してボタンを押す。・・・ケーブルカーは動かない。なんでやねん。あれこれ試行錯誤していると、上層の駅のほうにスタッフが出てきて、ケーブルカーのドアを閉めなおした。・・・なるほど、ドアが完全に閉まってないと動かない仕組みなのね。それにしても先客、ちゃんとドア閉めろよな!!

気を取り直して、やってきた車両に乗る。中は6人掛けで、斜面に合わせて斜めに2人ずつ三列座れるようになっている。こちらは母と二人なので、一番下の段に腰かけ、ドアを閉めてロックをかけ、発車ボタンを押す。ケーブルカーは静かに発車し、ゆっくり山を登っていった。

それにしてもこの感じ、何かを思い出す・・・そうだ、昔パリのモンマルトルの丘のケーブルカーで、発車直後に車両故障が発生して閉じ込められたときに似ているなぁ・・・と思っていたら、母も同じことを思っていたらしく、「大丈夫かねぇ~」と言葉を交わす。

山を登る5分間、車内を見渡すと、緊急用の設備らしきものは連絡用の携帯電話のみ。きっと何かあったときはこれで電話して助けに来てもらうってことなんだろう。一方ケーブルカーの上る斜面のほうはどんどん傾斜を増してきた。傾斜がきつくなると、ケーブルカーは自動的に座席の角度を変え乗客が快適になるように調整している。見た目によらず意外とハイテク?なのか??

そのうち陸が切れて海が見え、ここは朝来たらとても良い眺めだろうな、と思っているうちに上層階に到着。次に下で呼び出す人のために、しっかりドアを閉めてから(笑)、オーバル棟に入ってみる。

2008年3月13日木曜日

<1日目の17>ミュージアム内、夕食後の散策 8:30PM

食事のあと、シャトルバスに乗ってミュージアム棟へ戻った。

ベネッセハウス内のギャラリーは一般人でも8:00~21:00の間見ることができるが、宿泊していれば早朝や夜中も含めていつでも見られる。実際のところ遅い時間や朝早くは宿泊客しかいないので、自分のペースで好きな作品をのんびり見て回ることができるのだ。(ちなみにほかの棟内にも、いくつかの作品やデザインチェアなどが点在している)

ギャラリーの作品は、屋外展示と違って撮影もご遠慮下さい、ということになっているので写真は撮らなかったが、なかなか面白いものが多数ある。

なかでも私のお勧めを挙げるなら、

夜見るべき作品:ブルース・ナウマン「100生きて死ね」
朝見るべき作品:安田侃 「天秘」

以上2つ である。

ナウマンの「100生きて死ね」(100 Live and Die)は、ネオンサインを使った大型の作品で、館内のホールのど真ん中に設置されている。天井に明かり取りの窓があるので、ホールは昼は明るく、夜は暗い。で、この作品はネオンを使っているだけに夜のほうが圧倒的に存在感があるのだ。

50の異なる単語とLIVE、そしてDIEという単語を組み合わせた、カラフルな100のフレーズがひたすら明滅するこの作品は、そのテーマも夜にふさわしい。作品の目の前に椅子(これまたデザイナーもの)が設置されているので、夜、暗くなったホールで椅子に座って1~2分ぐらいはじっくり眺めていると、この作品はちらっと見て終わらせるのではなくて、この作品が放つ全てのメッセージを読み取るまで時間をかけて眺めることを要求している作品であることがわかってくる。

深く考えても興味深い作品だし、深く考えなくても足を止めて見ずにはいられない面白さがある。
こういう作品は大好きだ。

一方、安田侃(やすだ・かん)は、その名前は知らなくてもその作品はみんなどこかで見たことがある、というぐらいメジャーなアーティストである。東京国際フォーラムで、あるいは東京ミッドタウンで、とてもすべすべとした、手触りのいい大理石のかたまりが置かれているのを見たことがないだろうか。あれが安田侃の作品である。

このギャラリーでは、「天秘」は壁に囲われた屋外に設置されている。夜に行くと外は真っ暗だし寒いので、誰もその近くまで行こうと思わないどころか、私たちはその手前のガラス戸が誰でも開けられるようになっていることすら気づかなかった。

が、朝明るい光の中でそこへ行って初めて、作品の近くに「靴を脱いでおあがり下さい」(※不確か)という表示があることに気づいたので、あがってみた。というか寝てみた。冷たく硬いのに、なぜかやわらかい気がしてしまう石を寝床にして眺める、直島の朝の空は格別だ。・・・夜行けば星空が見えるのだろうけれど、少なくともこのシーズンでは、石の上ではたぶん寒くてのんびり眺めるところじゃなかろう。というわけで、朝がお勧めなのである。



<写真>「天秘」に寝転がって青空を見ながら世界の神秘について考える(?)masaccio